カンガル・シェパード・ドッグとは
2026年3月14日

カンガルシェパードドッグに関して、インターネット上には様々な情報が流れています。世界的にも有名な犬種ではありますが、間違った情報も数多く見受けられます。そして、残念なことに日本でもそれが信じられてしまっている現状は、少なくないと感じています。
カンガルシェパードドッグ(以下、カンガルと記します)は、ご 存知の方も多いですが、数千年前から存在する、トルコ原産の比較的大型の犬種です。
そして、私が強い違和感を抱くのは、カンガルの体の大きさと見た目に関する情報です。多くの情報が、その特徴を誇大していると捉えてください。インターネットで検索すると、カンガルを非常に巨大な犬のように謳う画像や、またそれを主張する飼い主がいますが(そもそもその見た目も、マスティフ系雑種であり、カンガルではない…)、それは間違いです。
カンガルの体重は、50kg前後から60㎏を少し超えるくらいまで。四肢は割と長めですので体高は高く見えますが、その程度の大きさです。何度か書いていますが、決して「巨大な犬」ではありません。そして、顔や首、唇の皮が垂れ下がったマスティフのような見た目ではありません。さらに、頑丈で体格に合うガッシリとした頭蓋骨を持ってはいますが、巨頭な犬でもありません。その為、走るスピードは速く、動きは軽やかです。アクティブな犬種であり、日がな一日寝ているような犬ではありません。トルコでは「カンガルの吠える声が聞こえたら、もう逃げられない。」と言われることもあるそうです。異常を察知し、防衛のために駆けつける能力の高さを比喩したものだと思われます。
ただし、家族に対しては愛情深く、特に弱い立場の者を直感で見抜き、献身的に守ります。この能力は私も目の当たりにしていますが、非常に素晴らしいと思います。特筆すべきは、例えその対象が人間ではなくても、という点です。他の犬種に、それを教えずに行わせることは簡単ではないでしょう。カンガル自身が、自分の家族に信頼と尊敬の念を寄せている場合、飼い主と一緒にいるときに犬が飼い主を押しのけて他者に吠え掛かったり、攻撃をすることはありません(全ての犬に言えることですね)。むしろ、後ろに下がってすべてを任せます。カンガルが危険な犬となるのは、彼らが守る敷地の中に、飼い主に招かれざる者が侵入しようとしてきた時と言われていますし、実際そういう仕事をしてきた犬ですから、その通りだと思います。この辺りは、世界中の大型の護畜犬と同じような特徴でしょう。
ここで、カンガルの見た目に関しての情報も少しお話します。
カンガルという犬種は、トルコ中部のアナトリア地方で長年人々と家畜と共に暮らし、それらを護る使役を担いつつ、自 然淘汰を受けながら(一部、護畜として好ましくない気質の犬は、人為的に淘汰されてきたという情報もあります)独立した犬種として発展を遂げてきました。
カンガルの体色として認められているのは「フォーン&ブラックマスク」のみです。体色はフォーン(簡単に言うと薄茶色です)がベース。ただ、濃さには個体差があり、かなり暗めの被毛を持った犬もいます。絶対条件なのは、ブラックマスクです。要は「顔が黒く、体が茶系単色の犬」ということ。カンガルは上述した通り、主に家畜(特に羊)の護衛をしている犬です。その羊の群れに姿かたちも溶け込む必要があったため、同じような見た目の個体だけが残されていったと言われています。カンガルの尻尾が長いのも、その理由の一つかなと思います。羊は、生まれたばかりの時は地面に付くほど長い尻尾を持っているのです(現在は生まれて数日で仔羊は断尾をしますが、数千年前は判りませんからね…)。また、カンガルの身体は基本的には単色ですが、一部に白斑が入ることがあります。これは、各ケネルクラブにより許容される部位が異なっています。原産国のKIF(トルコケネルクラブ)が定めているものは、白斑は胸と尾の先端にのみ許されるが、胸部の白斑は直径10cm以下という決まりがあり、その他の部分に白斑が入ることは好ましいとされていません。
当ケネルは、なるべく原産国の定めるスタンダードに則った個体を残すことを目標としています。それが、原産国や、カンガルという犬種の健全性・純度の維持に携わって尽力してきた世界中のブリーダーに敬意を表することにもなると考えているからです。「自分が好みのスタイルの犬を殖やす」のではなく、数千年かけて生き抜いてきたカンガルを護り、その永続性を目指すことがこの犬種のブリーダーに求められることであると、私は確信しています。
